銀行などの金融機関から融資を受ける際、事業計画や資金の使い道と同じくらい重要なのが、会社の財務状況です。
金融機関は決算書を通じて、主に次の点を確認します。
- 会社に十分な返済能力があるか
- 財務基盤が安定しているか
- 今後も継続して利益と資金を生み出せるか
融資を申し込む前に自社の財務指標を確認しておけば、金融機関からの質問に答えやすくなり、必要に応じて改善策も講じられます。
ここでは、融資前に特に確認しておきたい3つの財務指標を解説します。
1.自己資本比率
自己資本比率は、会社が保有する総資産のうち、返済する必要のない自己資本がどの程度を占めているかを示す指標です。
計算式は次のとおりです。
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100
たとえば、総資産が5,000万円、自己資本が1,500万円の場合、自己資本比率は30%です。
自己資本比率が高い会社は、借入金への依存度が低く、財務基盤が比較的安定していると判断されます。一方、自己資本比率が低い場合は、負債への依存度が高く、業績悪化時の返済負担が重くなる可能性があります。
ただし、適正な水準は業種や会社の成長段階によって異なります。設備投資が多い業種や創業間もない会社では、自己資本比率が低くなりやすいため、数値だけで判断するのではなく、その理由を説明できることが重要です。
融資前の確認ポイント
自己資本比率が低い場合は、次の点を整理しておきましょう。
- 借入金が増えた理由
- 今後の利益による自己資本の増加見込み
- 不要な資産や過大な在庫がないか
- 役員貸付金など、金融機関から問題視されやすい資産がないか
赤字が続くと自己資本が減少し、債務超過になることもあります。融資を検討する際は、現在の比率だけでなく、過去数年間の推移も確認する必要があります。
2.債務償還年数
債務償還年数は、現在の借入金を事業から生み出す資金によって返済する場合、何年かかるかを示す指標です。
代表的な計算方法は次のとおりです。
債務償還年数 = 有利子負債 ÷ 簡易キャッシュフロー
簡易キャッシュフローは、一般的に次のように計算します。
簡易キャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費
より実態に近づけるため、現預金を控除した実質的な借入金を使う場合もあります。
たとえば、有利子負債が6,000万円、税引後利益と減価償却費の合計が年間1,000万円であれば、債務償還年数は6年です。
債務償還年数が短いほど、会社の返済能力は高いと考えられます。反対に、年数が長い場合は、現在の収益力に対して借入金が多い可能性があります。
金融機関によって評価基準は異なりますが、重要なのは単年度の数字だけではありません。毎年安定してキャッシュフローを確保できているか、今後の投資によって収益が増える見込みがあるかも確認されます。
融資前の確認ポイント
債務償還年数が長い場合は、次のような説明を準備します。
- 一時的な設備投資によって借入金が増えた
- 新規事業の立ち上げ直後で、利益がまだ十分に出ていない
- 今後の受注や売上増加によって返済原資が増える予定である
- 不要な借入金を返済する計画がある
追加融資を受けると、借入金だけでなく年間の返済額も増加します。融資後の債務償還年数を試算し、無理のない借入額を検討することが大切です。
3.債務返済余力比率(DSCR)
債務返済余力比率、いわゆるDSCRは、事業から得られるキャッシュフローが年間の元利返済額をどの程度カバーできているかを示す指標です。
一般的な計算式は次のとおりです。
DSCR = 返済に充てられるキャッシュフロー ÷ 年間元利返済額
たとえば、年間の返済原資が1,500万円、元金と利息の返済額が1,000万円であれば、DSCRは1.5倍です。
DSCRが1倍の場合、返済原資と返済額が同額です。計算上は返済できますが、売上の減少や経費の増加が発生すると、資金繰りが厳しくなる可能性があります。
1倍を下回る場合は、事業から生み出す資金だけでは返済額を賄えていない状態です。預金の取り崩しや資産売却、追加借入などによって返済している可能性があるため、金融機関は慎重に審査します。
融資前の確認ポイント
DSCRを確認する際は、次の条件を反映させて試算しましょう。
- 既存借入金の年間返済額
- 新規融資を受けた後の返済額
- 金利上昇による利息負担の増加
- 売上が計画を下回った場合のキャッシュフロー
- 設備投資後に発生する維持費や人件費
特に重要なのは、楽観的な売上計画だけで判断しないことです。売上や利益が計画を下回ったケースも想定し、それでも返済を継続できるか確認する必要があります。
3つの指標は組み合わせて判断する
財務指標は、一つの数値だけを見ても会社の実態を正確に判断できません。
たとえば、自己資本比率が高くても、利益やキャッシュフローが少なければ返済能力は十分とはいえません。反対に、自己資本比率が低くても、高い収益力と安定したキャッシュフローがあれば、返済能力を評価される可能性があります。
融資前には、少なくとも次の3点を組み合わせて確認しましょう。
| 財務指標 | 確認できる内容 |
|---|---|
| 自己資本比率 | 財務基盤の安定性 |
| 債務償還年数 | 借入金と収益力のバランス |
| DSCR | 年間返済額に対する返済余力 |
また、直近1期だけではなく、過去3期程度の推移を確認することも重要です。数値が悪化している場合は、その原因と改善計画を説明できるようにしておきましょう。
融資申し込み前に行いたい準備
財務指標を確認した後は、金融機関に提出する資料との整合性を確認します。
特に、次の資料を準備しておくとよいでしょう。
- 直近3期分の決算書
- 最新の試算表
- 資金繰り表
- 借入金の一覧表
- 月別の返済予定表
- 融資金の使い道を示す見積書
- 売上や利益の根拠を示した事業計画書
財務指標が理想的な水準に達していなくても、それだけで融資を受けられないとは限りません。数値が悪い理由を把握し、具体的な改善策と返済計画を説明できることが重要です。
まとめ
融資前に確認したい主な財務指標は、自己資本比率、債務償還年数、DSCRの3つです。
自己資本比率では財務の安定性、債務償還年数では借入金と収益力のバランス、DSCRでは毎年の返済余力を確認できます。
融資審査では、現在の数値だけでなく、過去からの推移や今後の見通しも評価されます。まずは自社の決算書と借入状況を整理し、追加融資後も無理なく返済できるか試算しておきましょう。
事前に財務状況を把握し、数値の背景まで説明できるようにすることが、金融機関からの信頼を高める第一歩です。